翌日、アリスは思い切り寝坊した。昨夜はなかなか眠れなかったからだ。

 一方的な求婚をしてきたルーク王子は、発表が終わるとさっさと会場から去ってしまった。

(マジで意味がわからん)

 ベッドの上で昨夜のことを考えていると、だんだんと腹が立ってくる。

 初対面なのにいきなり求婚とは、ルークはよほど自分に魅力を感じ、一目惚れしたのだろうとアリスは思った。

 だから舞踏会が仕切り直され、新しい曲が始まるタイミングでダンスに誘われるのかと緊張した。けれどそれはなかった。

 では、ゆっくり話でもするのかと思えば、それもしなかった。

 ルークは「では、また」とだけ言い、会場を後にしてしまったのだ。

 取り残されたアリスは、呆然と揺れる金髪を見送るしかなかった。


(あのひと、いったい何を考えているの? ちょっと変なひとなのかな)

 人生で初めて──しかも前世も含めて──異性から求められたと思ったら、この状態。

「お腹空いた……」

 難しいことを考えると、脳の糖分が消費され、不足する。前世の亜里はそう思っていた。

 アリスは考えるのをやめ、メイドを呼んだ。

 ぼんやりと着替え、温められた食事を運んでもらい、それをもそもそと食べた。