アリスは彼の代理として、王子の結婚式に参列し、祝福をせねばならないのだ。

「……わかったわ。また、あとでね」

 マントから指を放すと、ルークは颯爽とその場を去っていった。

「では、私たちも行こうか。時間だ」

 肩を落とすアリスの横を、アーロンとソフィアが通りすぎていく。

「可哀想なひと」

 ソフィアがくすりと笑いながら、小声で呟いた。

 アリスは俯けていた顔を上げ、声を張り上げた。

「殿下、王太子妃殿下、おめでとうございます!」

 驚いたアーロンがアリスの方を振り向いた。

「私も結婚して本当によかったと思っています。許可をくださった国王陛下には感謝しかありません。お二人も、どうか末永くお幸せに!」

 渾身の作り笑顔を性格の悪い二人に放出すると、アリスは踵を返し、前室のドアを開けた。

 バタンと閉まったドアを見て、アーロンは言った。

「貧乏王子に嫁がされた女の負け惜しみかな」

 ソフィアは眉を下げ、彼に答える。

「そんなことを言ってはお可哀想です。そっとしておいてあげましょう」

「やはりお前は優しいな」