でも、ここでは他に医師がいない。アリスがどうにかしなければならない。

「まず、起きて暴れないように鎮静剤を」

 ジョシュアの腕に点滴針を刺す。亜里の記憶がアリスの手元を躊躇なく動かしてくれる。

 内視鏡スコープは外の画面に映像を映し出す役目もあるが、ここにはテレビがない。今回はあくまで、食道にある静脈瘤まで注射針を届ける目的のために使う。

 そして注射した硬化剤が逆流してこないよう、スコープにつけたバルーンを膨らませて食道を塞ぐ。

 アリスは自分の透視スキルで体内の状態を見つつ、ジョシュアの口からスコープを挿入した。

 彼の食道は、瘤だらけでごつごつとしている。今回出血を起こしたもの、今後出血を起こしそうなもの全てに硬化剤を注射し、血栓化させる。

 ルークはアリスがどうやって中の状態を窺い知ることができるのか、どうしてこんな方法を知っているのか質問したかった。が、彼女の邪魔をしないようにぐっと堪える。