僕が返事をすると部屋のドアがゆっくりと開いて少女が顔を覗かせる。まだあどけなさが残る少女は僕と目が合うと嬉しそうに笑う。

「おはよう、お兄ちゃん。お母さんが朝ご飯が出来たって言ってたよ」
「分かった。着替えたらすぐ行くよ」
「うん」

 僕が小さく微笑むと光莉ちゃんは頷いて継母のところへ走って行った。僕は彼女が去った後、弧を描いていた笑みを苦虫を噛み潰したような表情に変え、大きく息を吐いた。あんな小さな子でも駄目だなんて、本当どうにかしている。
 僕はパジャマから制服に着替えながら険しい顔をなんとか通常通りに戻す。