松菱くんのご執心

 壁掛けの時計が目に入る。



「ああ、もう交代の時間すぎてるから接客してくるね」


 わたしは更衣室から出ようとした。


────しかし、腕を捕まれ、それは叶わなかった。



「それはダメだな、さっきも言ったろ? スカート短すぎるって」


「松菱くん、お父さんみたい。でも、衣装これしかないから」


「彼氏の間違いだろ。

とにかく、俺が嫌なんだ。下心丸出しの奴らの視線に触れるのが、胸糞悪いんだ」



 松菱くんだって下心丸出しじゃん。



なんて野暮なことは言わなかった。多分、俺は彼氏だからいいのと、言ってくるに違いないからだ。



「でも、クラスに迷惑かけることだけはしたくないよ」


「うん。分かってる。だからさ岡野に準備しておいてもらった、これも可愛すぎるから俺的には不満なんだが」


ちょっと待ってろよと言って更衣室から出たかと思うと紙袋を持って戻ってきた。


「こっちに着替えて」


「なにこれ?」


「コススレ衣装第二弾だ」


紙袋をわたしに持たせて、さっさと出ていく。


「それだったら、まだ許せる。着替えたら言って」