松菱くんのご執心

 その言葉で、相手の沸点が頂点に達した。


殴りかかってくるのでは、と、私は身構える。


────が、そこにちょうどパトロール中の警察官が通りかかり、


「何してるんだい、学校は?」と自転車から降りてきた警察官に話しかけられた。


日中に制服姿の学生はただでさえ目立つのに、それに加え険悪な空気になっているのだ。


そりゃあ、止められるだろう。



わたしはすぐさま「文化祭の準備でダンボールを頂きに行ってたんです」と慌てて説明した。


「で、こっちの三人は」と、聞かれたので

「さあ、誰なんでしょう」と、明後日の方向を向いてしらを切った。





 そして、学校に戻ったわたしは「こんなことがあってさ」と真結ちゃんに一連の出来事を報告した。



「ダンボール取りに行っただけなのに、そんなんになって。あらまあ」


「俺の素行が悪かったつけが回ってきたんだろ。

みかさも外に出る時は気をつけろよ、俺と一緒にいる所を見られたからな、

まさかとは思うが何かあったら大変だから」


「うん、分かった。松菱くんも気をつけてね」


「二人はほんとに付き合ってないの?」


真結ちゃんは訝しげにわたしと松菱くんを交互に見る。


「俺は好きだけど、みかさのこと」


 後ろから松菱くんが抱きついてくる。


ええっ、とドキドキおろおろする。

ナチュラルに過度なスキンシップをするのは彼の癖みたいなものだ。


「が、学校だよここ」


「お? 家だったらいいのか?」


「そういう事じゃなくて……」

心臓がどくどく音を立てる。