タオルを一階に取りに行った時のこと。


洗面所へ行く途中に横手にリビングが見えた。家庭によって差異はあるだろうけれど、生活感がなかった。



いや、あるにはあるのだけれど薄いのだ。



まるで一人で長いこと暮らしてきたように、一人分の生活感しか無かった。


四人テーブルに一つだけランチマットが敷いてあったり、


四つ分の歯ブラシ立てがあるにもかかわらず、立ててある歯ブラシが一つだけだったり。



高校生が一人暮らしをしているのは珍しいが、中にはそういう自立した学生もいるだろう。



 だけど、この広い一軒家にたった一人分の生活感。


これは勘ぐりすぎかもしれないが、言い方を変えると、四人分の生活感が四分の一に薄まったと言った方が正確だと思う。



それを目の当たりにすると、無性に胸が痛く、当人では無いわたしが悲しくなった。


わたしが聞くべきではない事情がそこにはありそうだった。



 しかし、三木さんや戸黒さんのように彼を気にかけてくれる、


そして松菱くんの支えになっている大人がいたことが今日のお見舞いで唯一心をなでおろした瞬間だった。



たった一週間と数日前に出会った関係でこんなにも人に執心するとは思ってもみなかったことだ。