「みかさちゃーん! ちょっと手伝って欲しいんだけど」


わたしの友達、本盛 真結ちゃんがこちらへ駆け寄ってきた。


「これなんだけど」わたしの席にメジャーとメモ用紙をおく。



「えっと。それは、何?」

「文化祭の準備で、採寸手伝って欲しいの」

「いいけど、今じゃないよね」


「まさか、違うよ。今日の放課後なんだけど、空いてる?」



空いてるよと返事すれば、



「良かったあ! わたし一人じゃなかなか終わらないと思うから、めっちゃ助かる。ありがとう」


 明るくて元気いっぱいの真結ちゃんは文化祭の実行委員で今とても忙しい。文化祭まで残り一ヶ月と少しになった。



 ふと、隣の席に視線を移す。
この時期になっても隣の席の彼はまだ一度も現れることは無い、どんな人なんだろうか。



男の子という事は知っているが、病弱なのかそれとも、不良少年なのかは知らない。



 その日の放課後、予定通りわたしと真結ちゃんとで衣装の採寸を行った。



二人でせっせと手際よく測ったのもあってか、それ程時間は要さなかった。



「ごめんねえ、ほんとにありがとう」


「いいよ、体育祭の時は、わたしが手伝ってもらったし。お互い様」


「かっこよすぎるよ、みかさちゃん。………あっ!」


そう言って、思い出したように掛け時計を見た。



「やばい! バイトの時間だ! 急いで片付けよう」


「それは大変。後はわたしがやっとくから先に帰りな」