松菱くんのご執心

それにしても、児童相談所と家庭裁判所の人が両方いっぺんに、ひとつの家に集まっているのはとても普通のことには思えなかった。



 夕食にハンバーグと、肉じゃがを同時に出された時の子供の戸惑いと似ている。



どっちから食べようと悩む以前に、なんでメインがふたつも? 


明日ときょうで分ければいいじゃん、と母親に尋ねたくなる感じだ。




「聞きたいことが一杯あるって顔だな。
……まず、この二人は調査とか言いながら俺の家に入り浸ってるサボり魔だ。
ただサボりに来てるんだ」



「人聞きが悪いな」「そんなわけないじゃないですか、職務ですよ」と二人が口々に言う。



二人を横目で見て松菱くんは「まあ、そんな感じだ」とため息混じりに言った。


「この二人は怪しいけど怪しい人じゃない、一応お世話になってるから」


「一応とはなんだ、一応って。
すっげえお世話になってるの間違いだろ、訂正するまで俺は帰らねえからな、おーい、秀ちゃーん」


三木さんが松菱くんを激しく揺すった。



「三木さん、病人をそんなに揺すらないように」


猫のように三木さんの首根っこを掴んで引き剥がす戸黒さん。


この二人も仲がいいみたいだ。