松菱くんのご執心



「……みかさ?」



そこに、松菱くんが玄関へ出てきた。その後ろに一度奥へ引っ込んだ男の人もいた。



「松菱くん………」


わたしは呟き、はっとする。


「あ、ダメだよ出てきたら、寝てなきゃだめ。それに、まだちょっと顔赤いみたいだし」


「あ、いやこれは」松菱くんは咄嗟に手の甲を口にあてる。


「おいおい、照れてんのか秀ちゃん」後ろから男の人が冷やかす。


「そんなんじゃねえって」


「ここじゃ寒いですし、家の中に入ってください」


戸黒さんが手をすっと移動させ、家の中を指した。


「ええっ?」


「さあさあ、どうぞ」



戸黒さんが私の背中を軽く押して家のなかへ案内してくれる。



わたしは戸惑いながら、グイグイと背中を押され、されるがままに部屋へ通された。



何か言いたそうな松菱くんが気になって、



「ごめんね、まだしんどいでしょ。すぐ帰るから」


とこっそり聞いた。


「いや、あいつら自分の家みたいに過ごして、腹立つんだよ」と意味深な答えが返ってきた。



家族、では無いという事はこの人たちは何者? それに尽きた。