松菱くんのご執心



 怪我をしている松菱くんは外傷よりも、もっとボロボロに見えた。


そっと抱きしめ、頭をポンポンとリズム良く撫でる。



「もう、大丈夫。……大丈夫だから」



子供をあやすように声をかけた。わたしに体重を預ける松菱くんは、なんだかとても可愛かった。




しばらくそうしていると、不意に松菱くんが遠慮がちに袖を引いてきた。


パチッと目が合わさり、わたしは首を傾げる。


「……ん、どうしたの?」


「俺さ、思うんだけど……」


「なに?」


「みかさの子供になる子は、きっと幸せ者だと思うな」


 松菱くんは顔を起こし、涙を腕で拭う。それからクシャッと笑った。


少しでも普段の様子に戻ってきたみたいだ。よかった。松菱くんには笑顔がよく似合う。


わたしもつられて笑った。


「なにそれ、遠回しなプロポーズ?」


「うん。そう捉えてもらって構わない」


「松菱くんも絶対いいパパになるよ」


「どうだか、俺はそんなに自信が無いな……。
だって、俺の家庭はあんなだったんだぜ? 
俺がもし子供に暴力を振るったりしたらって考えると、正直、怖いよ」