松菱くんのご執心



 松菱くんには、諦めるんじゃなくて期待して欲しい。




わたしは、もう、こんなに好きなんだから。



 いくら自分が悪く言われようが、冷たい視線を受けようが何も感じてないみたいに振る舞ったりしないで欲しい。



そんな事に慣れないで……。




「もう、いいかな」



松菱くんは途切れ途切れに言葉を繋ぐ。声は潤んでいた。



「もう、犯人捕まえられなくても……いいかな? 俺……疲れたよ。
傷つくのも………傷つけるのも、もういやだ」


「うん」



わたしの肩に頭を乗せる松菱くん。涙の雫が手の甲を弾いた。


「充分だよ。……充分苦しんだし、頑張った。
それに、今は黄金時代なんでしょ? もう前を向いてもいいんじゃないかな?」