「幻滅してないよ。しないよ、そんなの」
「嘘だ、こんなの聞いて幻滅しない方がおかしいだろ。
彼女になるの、やっぱなしって言うなら今だぜ……」
自暴自棄に言い放つ。
彼は相当な覚悟の上でこの話をしたんだ。それが手に取るように分かる。
わたしが離れていく覚悟で、唇を噛み締め、話をしてくれた。
彼は、わたしが簡単に離れていくと思っているのだろう。
だとすれば、わたしの、この想いは何ひとつ松菱くんに伝わっていないじゃないか。
「何も分かってないよ、松菱くん」
「分かって、ない?」
「……そう。これっぽっちも分かってない。全く、全然だよ。あのね、わたしはさ。
わたしが見ている松菱くんが全てなの。
優しくて、ちょっと甘えたなところがある。それがわたしの中の……大好きな松菱くん」
金髪から覗く目は少し赤くなっていて、それがなんだか、狼のようにも見えた。
「なんでみさかは、俺が、欲しい言葉をくれるんだよ。
俺ばっか………いつも貰って。俺ばっか、好きが積もって……そんなの不公平だ」
「不公平なんかじゃないよ。私だって好きが積もってる。いつもわたしばっかりドキドキさせられて、ずるいって思ってる」



