松菱くんのご執心




「罪を憎んで人を憎まず」まさにこの言葉がピッタリだ。



親に子は必要でなくても、五歳の俺には親が必要だった。



どれだけひどい仕打ちをされても、親からの愛情がなくても、だだ母が存在しているだけで良かった。



 そして、俺は施設に引き渡され、幼稚園を卒業し、小学校へ入学する。
そうして成長していく間に気づいてしまった。



俺は、母がまるで人形のように殺されるのを、陰で見ているだけの最低な人間だと、


愚かでどうしようもない人間だということに気づいてしまった。



ましてや開放されたと、喜んだんだ。



俺は怖くなった。


鏡にうつる自分が化け物に見えた。



………なんてことをしてしまったんだろう、殺したのは俺だ。

産んでくれた母の死を喜ぶなんて、どうかしてる。



こんなことなら俺が殴られ続けて死んだ方がマシだった。




自分自身に、吐き気がした。