────俺の家は散々だった。
弁護士である父親は母に暴力を振るい、父親が仕事へ行けば、母が俺に暴力を振るった。
それは質の悪い冗談ではなく、いや、むしろそうであって欲しかったが、悪循環で成り立って居るような家庭だった。
その頃の俺は、まだ五歳と、物心着いて間もない歳だった。
その日も変わらず、父親が帰ってくる直前まで母は俺を殴りつけていた。
「ごめんね秀一、………ごめんね」
なんて言いながら、今日も殴る手をやめない。
母は、もう既に壊れていた。精神的にも身体的にも…………。
その証拠に母の腕や背中には内出血の痕が重なるようについていて、目には隈が目立っていた。
父親が帰ってくる一時間前になると、俺は暴力から解放され、リビングの隣室へ逃げ込む。
そして、声を押し殺して泣いた。



