松菱くんのご執心



わたしは胸が縮まるような感覚になり、言葉を詰まらせる。

その話を彼から振ってくるということは、正直に答えてもいいのだろう。


「それは………まあ。気になるけど」


「じゃあなんで聞かない?」


 わたしは自らその話題に触れずにいた。

聞きたくないからじゃない。話してくれるのを待っていたからだ。



「それは、わたしが聞いていいことなの?」



 松菱くんは無言で頷く。


自分からその話を振ったくせに、どこか緊張しているようだった。

だから、それは、彼の根幹に関わるデリケートな話だと察する。



「松菱くんはさ、自分では気づいてないかもしれないけど、色々なことを諦めてる気がするの。
わたしの勘ぐりすぎかもしれないけど」


「どうだろう……分からない」


「爽がさ、散々松菱くんに言ってたよね? 

なのに、それを上手く受け流すというか、なんか、言葉にしずらいんだけど。

ある程度は言い返してるけど自分への批判に慣れちゃっててさ、もっと否定していい所を、
自分を押し殺してた印象があるの。ほんの少しだけだけどね」


「……言われてみれば、そういうとこはあるかも」