松菱くんのご執心



 他愛のない話をする中、松菱が不意に言った。


「みかささ、昨日、聞いてたんだろ?」


「聞いてたって………?」


「俺が殴られる前から、みかさ、路地の入口にいただろ」



 それはわたしを責める口調ではなく、寧ろ慰めるような優しい、余裕さえ含んでいた。


「う、うん」


「じゃあ、俺とあいつらが話してた内容も聞こえてたはずだ」


「……そうだね、聞こえてたよ」


 次第に松菱くんが何が言いたいのかが分かってきた。


わたしが「松菱くんが両親を殺した」という事実に言及しないのかと言いたいのだ。



 予想通り松菱くんは言った。


「気になるはずだ。俺が両親を殺したって話」