松菱くんのご執心



「たぬき寝入りはんたーい」


岡野が声を高くする。


目を開けると、そうだそうだと言いたげに松菱くんはつんと口を尖らせていた。



「あんまり松菱くんが可愛からついね」


「バカップルはこれだから困るんだよ。見てらんないよもう」


真結ちゃんが呆れる。しばらくして、わたしが否定しないことに気づいて目をパチパチとさせた。


「………えっ! もしかしてリアルバカップルになったの!?」


 松菱くんは無言でわたしの肩に頭を預けてくる。

 何故か真結ちゃんの疑問に答えたのは三木さんだった。



「そうだぜ。こいつらバカップルなんだ。
ほんとなんでだよ、なんで俺は彼女の一人もいねぇんだよ。
おかしくないか?
こんなにヒーローみたいないい男、他にいないと思うんだが。あーあ、ずるいなあ、秀一だけ彼女できて」



「僕もいないから、仲間ですね。三木さんならすぐに彼女できますよきっと」


岡野は嬉しそうに声を弾ませる。


「いやいや、全然嬉しくねえよ。そんな慰めされると余計悲しいわ」




「そんなことより。いやあ、実ってよかったね。良かったよ」


真結ちゃんがしみじみと繰り返した。