松菱くんのご執心




 車に乗り込むと、わたしはだんだん眠気に襲われ、うとうとしていた。



「車の揺れで、肋骨がきしんで痛い」



と松菱くんがわたしを揺すって起こす。



「みかさ、肋骨……」


と睡魔に負けかかってるわたしの肩を何度も叩き、
そして、ちっとも反応しないと


「心配してくんねえのかよ」と、子供のように拗ねた声で言うのだ。



 それを、すくすくとバックミラー越しに見ている三木さんと真結ちゃん、


それに岡野も声を合わせて、寸分の狂いもないタイミングで言った。



「子供じゃん」


 わたしはぷっと噴き出す。


「あ、おい、みかさ起きてんのかよ。なんで反応してくんねえんだよ」


よく分からないけれど恐怖の渦の中に居たはずの自分が、すっかり安心して、


いつも通りのしょうもなく、


それでいて贅沢な会話が、当たり前のようにされている事に笑ってしまう。