「あ、そうだ」
しばらくしてから、わたしはポケットをがさごそと探る。
「はい、これ。落ちてたよ」
「それ、俺のスマホだ」
「うん。路地の入口辺りに落ちてたから、丁度その時、岡野から電話もきてた」
「そっか、ありがとうな。心配かけたみたいで」
スマホを受け取った松菱くんは、しげしげと手元を見つめ、
「ああ、そうか」と静かに、それでいて納得したように頷いた。
「俺、もしかして、心配かけてたのか」
「何をいまさら」岡野が呆れた顔をする。
「こんなに沢山の人が松菱殿が無事かどうかを気にして、いてもたっても居られなかったんだよ。
君が白羽根さんに執心するように、僕達も君のことが心配でたまらなかったんだ」
岡野の言葉にわたしも同意する。
わたしも、凄く、凄く、心配した。
誰よりも心がキュッとなって、あなたの傍に吸い寄せられるように、勝手に体が動いてた。
助けなくちゃって、その一心でここに来たんだよ。
松菱君の事情なんて、簡単に見て見ぬふりだって出来てしまう。
それくらい今の………あなたの事が好きなんだ。
だからわたしは、聞かないよ。聞きたくないわけじゃないけど、しまっておきたい過去はほいほい表にするべきじゃない。
けど………もし、話してくれるのなら。
わたしは鷹揚に構えているつもりだ。



