松菱くんのご執心



「俺も……これで最後だ。もうこんなことには巻き込ませない」



松菱くんが言った。


「───ちげえよ」


いつもと違って爽の口調は荒々しい。


「みかさを巻き込まないだけじゃなくて、その……」


「ん? なんだ」
松菱くんは首を傾け、爽が次の言葉を発するのを待っている。


「松菱………お前も巻き込まれるなって、言ってるんだ」


目を逸らし、爽が照れくさそうに言う。


 そして続けてこうも言った。


「悪かったな散々悪く言って」


 松菱くんは目を丸くし、それを見ていた岡野と真結ちゃんは「なんだ、いい男じゃん」と声を揃えた。


わたしの頭の中のフィルムが巻きもどる。

昔の爽は、よくこういう顔をしていたなと思い出した。


照れくさいのに、それがバレないように取り繕ってそっぽを向く。そんな昔の影が今の彼に重なった。



「だからって、仲良くしないよ。じゃあね、お大事に」


と爽はぷいっと背を向けて繁華街を後にした。

ピタッと止まったかと思うと、あ、そうだと振り返って


「みかさのこと、ちゃんと送ってやってよ」と付け加えた。


「分かってる」

松菱くんも嬉しそうに返事した。