「だ、誰だ」
拳はふり降ろされることなく、男たちは振り返る。その顔には動揺が見て取れた。
それとは反対に、松菱くんは頬を緩ませる。まずいなと思った。
打ちどころが悪かったのかもしれないと心配はより一層濃くなった。
「ま、松菱くん大丈夫?」
「来た………来たんだよ。三木さんが」
松菱くんが笑った。
そして、ずるいなあいいとこ取りしてと他人事のように言う。ほら、と路地の入口を指すので、そちらを見る。
「え?」
繁華街のネオンが後ろか差し込み、影になって姿は見えない。ぼんやり男のシルエットが浮かび上がって、何やら神々しい光景だ。
しかし……よく見ると。
「よく手え出さずに耐えたな、秀一」
呑気に近づいて来るのは、確かに三木さんに違いない。
松菱くんはゆっくり身体を起こし、三木さんに小さく手を挙げた。
「近づくな、殴るぞ!」
男は動揺し、三木さんに唾を飛ばす。大声をだして威嚇しては、どこか怖がっている様子でもあった。
残りの二人も、どうすんだよと小突きあっていた。
三木さんは仁王立ちしたまま、男たちを見やり愚かな若者たちに同情した眼差しを向ける。
「殴る?そんなのは、状況を悪くするだけだぜ。……現行犯だ」
そう一言呟いたかと思うと、警察官数名が袋小路の中へやってきた。



