「僕が死んでも妻と息子には幸せになってもらいたい。だから、僕と妻は別れた方がいい。とかバカみたいなこと書いて、離婚届が挟まってたわ」
「…結局離婚してんじゃん」
「あの人の願いは叶えたかったのよ。だっていつも私の我が儘を聞いてくれてたんだから。最期の彼の我が儘を聞かなくてどうするのよ」
「バカだな、お前…っ、ひっ…う…」
その泣き声はまるで小学生のようだった。
感情のままに泣いているのがよく分かる。
そんな如月くんにつられて、お母さんもさらに泣いていた。
「ほんとバカ。親のことなんて無視してあなただけを守りきれば良かったのに。そんな度胸なかったから私、間違えたのね。許してなんて言わないから…紫苑、幸せになりなさい」
「お前に言われたかねーよ…」
如月くんは泣きながらお母さんに笑いかけた。



