如月くんは私をひとりじめしたい



「私は両親の言うことを無視したの。絶対そんな好きでもない人とあなたを育てたくなかったから」


如月くんのお母さんは如月くんに背を向けた。


「……でもあなた小さかったでしょ。当時の私にはあなたを養うお金も自信もなかったから、そいつと一緒に紫苑を育てようか迷った。だけど私とあの人の子だったからやめたわ」


話し声はどこか切なくて聞いているこっちが辛かった。

如月くんのお母さんはもう一度如月くんを見た。


「でもあいつと結婚してしまった私にはあなたを育てる資格はなかった。だから、わざと紫苑に嫌われるようなことばかり言って、私を忘れて欲しかったの。こんな最低な親のことを、忘れて…欲しかったの…」



如月くんは無意識なのか泣いていた。

声は上げなかったけど、静かに今までの日々を思い出したかのように泣いていた。