「一目見た時から兄貴や晶は随分とお前を気に入ってた。俺たちのことを話すって言われた時、なんで付き合いも浅くて信用できるかどうかも分からねーのに話すんだって、言い返した」

「………」

「俺は半分獣の血が混ざってるから、人間の匂いは鼻につくことが多い。でもお前は大丈夫だったから、信用してもいいんじゃねーかって思った」

あれ、なんか分かんないけど泣きそうだ。


聖がどんな顔をしてるのか私には見えないけど、私の泣きそうな顔も聖に見られないで済むから良かった。


「ちょっと似てるんだよな……」

そんな中、聖がぽつりと呟く。


「……え?」

上手く聞き取れなかった。


「なんでもねーよ」

聖は話を反らして、そのまま私のことを家まで送ってくれた。


いつか彼の弱い部分に、触れられる日が来るだろうか。

でもその前にもう少しだけ、聖の背中に預ける手を強くしてもいいかな。


こんな機会、二度とないかもしれないし、明日にはまた優しくない聖に戻ってるかもしれないし。

そう思うとまた胸が締め付けられて、やっぱり私にとって三兄弟の中で聖はなにかが違うのだ。


その〝なにか〟は、まだ自分でも分からない。