「あいつらって?」

「学校でぎゃーぎゃー耳障りのような声を出して、用もないのに近づいてくる奴らだよ」

ああ、一条三兄弟のファンの人たちのことか。


「無駄に甘ったるい匂いがするし、頭が痛くなる」

たしかに通りすぎるだけで香水の匂いがプンプンする女の子はいるけど……。
 

「……わ、私の匂いは平気?」

とっさにそんなことを聞いてしまった。


これでも一応女子だし、お風呂上がりには匂いがするクリームを塗ったりしてる。

匂いを周りに振りまく目的じゃなくても、聖は鼻が敏感だから無自覚に不快にさせているんじゃないかと気になった。


「イヤだったらとっくに追い払ってる。つーかこうして手を貸したりしない」

「………」

……ヤバい。それはちょっと……というかだいぶ嬉しいから、すぐに返事ができなくて困る。

なんで聖に対してだとこんなに胸が締め付けられるんだろう。

晶くんや昴さんと接する時とは違う。

恥ずかしさでドキドキするというより、近そうで遠いもどかしさが、心臓を不規則に高鳴らせている。


「これでも反対したんだ」

「え……?」

「お前に俺たちのことを話すこと」

それは私が知らなかった三人のやり取り。


本当になんの接点もなくて、ただお隣さんってことで食事に招待された。だからどうして私だったのかって、今でも思ってた。

もし、隣が私じゃなくても、昴さんたちは話したのかなって。