「俺が他の女と遊んでると思って、ふて腐れてたの?」
「……そうです」
もう、それはこの世の終わりだというほどに。
「俺が中途半端にしてるから、不安に思ったんだろ」
聖は私の心に寄り添うようにして、頭を撫でてくれた。
「ちゃんと想ってるよ。お前のこと。でも俺はこういう体だし、狼になった自分のこともまだコントロールしきれない」
「………」
「前みたいに、理性が効かないままお前に触りたくない。今度はちゃんと人間の俺で茉莉に触れたいんだ」
嬉しさで、視界がぼやけてくる。
きっと私が色々と考えていたように、聖も同じように、私のことを考えてくれていた。
「だから、もう少し待ってて」
聖のまっすぐな言葉に、私が頷く。
「でも、一回だけぎゅっとして」
珍しく甘えてみると、聖はいつものように「ん」と返事をして、私の体を引き寄せてくれた。
聖はあったかくて、優しくて、いい匂いがする。
「ずっと待ってるね」
私たちが結ばれるのはもう少し先になりそうだけど、これからもきみとの恋を、大切に育てていこうと思う。
〈END〉



