「晶からも連絡がきて、もうすぐ帰ってくるって言ってたよ」
晶くんがいれば、賑やかになるけれど、今日は笑える自信がない。
そのあとリビングに向かって、料理を温める手伝いをしてると、玄関のほうから音がした。
「あ、帰ってきたみたいだね」
昴さんの言葉に、私は無意味に背筋を伸ばした。リビングのドアを開けると、靴を脱いでいる聖と目が合った。
「あれ、来てたんだ」
聖は私の気持ちなんて知らずに、ケロッとした顔をしていた。ぎゅっと唇をへの字に曲げていると、その後ろからまた誰かが帰ってきた。
「はあー疲れた」
それは聖と一緒にいた女の子だった。
なんで?どうして?
そう思いながらも、すでに家に上げるような関係なんだと切なくなる。
まともに顔が見られない。
同じ空間にいたくない。
「す、すみません。私、帰ります」
昴さんにペコリと頭を下げる。
「え、おい……!」
聖に引き止められそうになったけど、私は急いで靴を履いて一条家をあとにした。



