……あ、来た。

窓の外を見ていると、食堂から戻ってきた一条三兄弟が中庭を歩いていた。言うまでもなくその後ろには、ぞろぞろと女子たちの群れもいた。


すごい人気だな……。

私は呆気にとられながらも、三兄弟よりもメロンパンを食べることに夢中で、口いっぱいに頬張っていた。

すると、三兄弟のひとりと目が合ってニコリと手を振られた。


どうも、という感じで、軽く会釈を返すと、それに続いて子犬のようにキラキラとした目のもうひとりに「まりりーん!」と、叫ばれてしまった。

ちなみに、まりりんとは、勝手に付けられてしまった私のあだ名である。


「え、うそ、茉莉(まり)知り合いなの!?」

景ちゃんが隣でビックリした顔をしていた。


隠していたわけじゃない。

ただとくに言う必要もないかなと思っていたことだったけど、こうして親しげに声をかけられると、黙っているわけにもいかない。


「う、うん。知り合いっていうか……」

私はぼそりと口を濁す。


一条三兄弟が私の家の隣に引っ越してきたのは、1週間前のことだ。


私が住んでいる場所はいわゆる住宅街。ずっと隣の家が建て売り物件として残っていて、つい最近買い手が決まったと近所の人が話をしていた。

どんな人が引っ越してくるんだろうとワクワクしている中、うちに菓子織りを持って挨拶をしにきたのが三人だった。