「ずっと待ってるだけじゃ、いつか一条くんを他の誰かに取られちゃうかもしれないよ?」

そう言って景ちゃんは、スイカジュースを飲んでいた。


「で、でも聖はあんまり女の子に興味がないっていうか……」

「そんなことないでしょ。男の子だもん」

昴さんや晶くんのように、女子に愛想を振り撒いたりしない。

そういうところが好きな反面、誰かと仲良くなることもないだろうと、私は安心してるのかもしれない。


「……あ」

と、その時。景ちゃんの視線がテラス席から見える通行人のほうへと向けられる。

どうしたんだろうと振り向くと、私の目は点になった。

そこにいたのは、美男美女のふたり。親しげに並んで歩いていて、遠くからでもその男の子が聖だと分かった。

隣にいた女の子は金髪のショートカットで、ボーイッシュな格好だけど、スラリと長い足はここからでも確認できる。

ふたりは本当にモデルみたいで、すれ違う人たちが二度見するほど目立っていた。


……ドクン、ドクン。

さっきから心臓の音がうるさい。

ふたりは買い物中なのか、横断歩道を渡って人混みに消えていった。