景ちゃんが言う一条くんとは、もちろん聖のことだ。おそらくだけど、そのことも聞きたくて景ちゃんは今日買い物に誘ってくれたのだと思う。


「どうもこうも、なんにもないよ」

私は少し口を尖らせて、夏季限定のメロンジュースをストローで啜っていた。


「付き合おうとか、そういう話にならないの?」

「ならないよ。聖の気持ちすら聞いてないし」

「でも両思いなんじゃないの?」

どうなんだろう。分からない。


昴さんや晶くんと違って、聖自身に大きな変化はない。

いつも眠そうにしてるけれど、たまに深夜深くまで部屋の電気がついてることもある。

これは最近知ったことだけど、野生のオオカミは12時間程度眠るらしい。

たぶん、日中は眠く、夜に活動的になる彼の行動は、狼の血が濃いせいもあるんだと思う。

そのおかげで、すれ違うことも多くて、悶々としてしまうことが多い。


――『わ、私が聖のこと好きだって気づいてる?』

あの時の返事もまだ聞かせてもらってないし、ふたりきりになっても、そういう雰囲気にすらならない。