血に支配されるのではなく、血を支配できるようになれ。私には霧島くんがそんな風に言ってるように聞こえた。
そして先ほどの言葉に付け加えるように、霧島くんが言葉の続きを言う。
「血は抗えば抗うほど濃くなるらしい。共存する方法は受け入れることだそうだ。俺もそうやって生きてきた」
きっと霧島くんにも、たくさんの苦悩がある。
それを乗り越えた経験者だからこそ、霧島くんの言葉は聖に刺さる。
「俺は負けず嫌いなんだ。だからここで心が折れてしまうなんて、そんなつまらないことはしてくれるなよ」
霧島くんがそう言うと、聖の体から熱が消えて、息も次第に落ち着いてきた。
〝共存する方法は受け入れること〟
それは聖にとって一番難しいこと。
だけど聖にとって、一番ほしかった言葉でもあったのかもしれない。
聖も自分自身で気づいたかのように、もうその顔には迷いも弱さも恐怖もなかった。
それを見た霧島くんはフッと笑って、石段のほうへと歩いていく。
そのあとを空からカラスたちが追っていた。どうやらカラスも無事だったようだ。



