「……聖っ!!」
私の声なんて無視して、聖はまた霧島くんに襲いかかった。
ガブリと聖が噛みつくと、次は霧島くんが翼を思いきり揺らして体ごと払い除ける。
やられたらやり返して、倒れたら起き上がっての繰り返し。
いつの間にかふたりは血だらけになっていた。地面には血溜まりもできている。
きっとこれは、どちらかが動かなくなるまで続く。
人間の喧嘩みたいに、話し合いでは終われない。
「……もうやめて……」
そんな訴えさえ、ふたりの耳には届かない。
先に動いたのは霧島くんだった。その翼で助走をつけて聖にものすごい速さで突進していく。
「危ない!」と声を出そうとした次の瞬間。
そのスピードを利用して聖が右の翼を叩いた。バランスを崩しかけた霧島くんのことを見逃さずに、聖は勢いよく覆い被さった。
間髪いれずに、その喉元に噛みつくと、神社に霧島くんの叫び声が響き渡る。
その攻撃で霧島くんの変異は解けて翼も爪もなくなった。
バタバタと逃れようとしていた霧島くんも、ただの人間になり、大人しくなっていく。
勝負はついた。聖が勝った。
なのに、聖は霧島くんの首もとから離れない。
むしろ強く、息の根を止めるように噛み続けている。



