「はは、やっぱり人間の理性を残せなかったのか!」
カラスたちがいなくなると、聖の視線は笑っている霧島くんへと向いた。
獲物を狙う目をしてる。まるで、私のことなんて忘れてしまったかのように。
「……っ。聖!私の声が聞こえてる!?」
必死で呼び掛けているけれど、人間の言葉さえ忘れてしまったかのように見向きもしない。
――『一度力を解放した時の影響は凄まじいよ。もしかしたら力を制御できずに我を失ってしまうかもしれない』
匠さんの言葉が、何回も頭の中で繰り返されていた。
聖が霧島くんの元へと一直線で走る。
霧島くんは指先でなにか印のような文字を書いて、聖の体を縛るような仕草をした。
けれど、術は簡単に突破されて、そのまま聖は霧島くんの腕に噛みつく。
ギリギリと鈍い音がこっちにまで聞こえてくる。
「人間用に使う術じゃ、やっぱり化け物になったお前には効かないか」
血がポタポタと垂れているのに、余裕を見せている笑っている霧島くんが怖い。
霧島くんは鋭く尖る指先で聖の体をえぐるように引っ掻いた。
「……キャンッ!」
真っ赤な血が上空に飛び散って、狼の鳴き声で聖が痛々しく仰け反っている。



