「羨ましい……だと?」
「そう、聖たちのことも、嫌いだと言ってる人間のことも」
冷たく当たり散らして、蔑んだ目で見下していても、無関心ではいられない。
「従えてるふりをして、人間を支配してる気持ちになっていても、霧島くんの周りには誰もいない」
「………」
「だから羨ましかったんでしょ?恋愛や日常生活を楽しんでるみんなと、その中心にいつもいる三兄弟のことが」
「……黙れっ!」
初めて霧島くんが感情をむき出しにして、声を荒らげた。
「……はは、俺があいつらのことを羨ましいって?そんなはずないだろ?」
薄ら笑いを浮かべているけど、私はそう自分に言い聞かせているように見えた。
「こんなことしてもなんの意味もない。霧島くんの体質だって、そういう人間への強い想いから体が反応して……」
「うるさい!」
霧島くんが私の首を掴んで、柱に思いきり押し付けた。
「……うっ……」
ギシギシと強くなる力。私に触れたことで、また霧島くんは八咫烏の姿になっていた。
闇と同化するように広がっていく大きな翼。宝石のようなオッドアイに、いつもの余裕はない。
「あのふたりにかけた術より、もっと強力なものをお前にかけてやろうか?そしたら人間のお前なんてすぐに……」
「――やめろ!」
静かな神社に響く声。霧島くんの力がゆるむと同時に、私は声がしたほうを確認する。そこにいたのは……。
「やっぱり俺の匂いを追ってきたか」
息を切らせた聖だった。



