「この縛ってる縄をほどいてよ」
「そしたらお前は逃げるだろ」
「どうやって逃げろって言うの?こんな森深い場所で、しかも現在地も分からないし、周りはカラスだらけ。逃げ場所なんてないでしょ」
こうなったら開き直るしかない。
私がメソメソと泣いたところで、霧島くんにはなんの効果もないのだから。
喋ってる間にもカラスは増え続けていた。霧島くんの指示を待っているかのように、じっとこちらを見ている。
昴さんや晶くんは大丈夫だろうか。
……聖は今ごろ私のことを心配してるかな。
私はこれからどうなるんだろう?
「霧島くんはなんでこんなことするの?……そんなに人間のことが嫌いなの?」
答えてくれるわけがないと知っていても、聞かずにはいられなかった。
「……人間は身勝手だ」
風の音に重なって、ぽつりと届いてきた声。
「人はすぐに忘れる。都合のいい時だけ頼って、飽きればすぐに別の場所へと流される」
霧島くんは寂しそうな瞳で神社を見つめていた。それはまるで、活気があった時代を思い出しているような遠い目だ。
……もしかしたら霧島くんはここで生まれ育ったのかもしれないと、勝手に想像した。
とても賑やかな時を知っていて、頼られる喜びも知っていて。だけどそれがなくなってしまった悲しさも知っているのかもしれない。



