いつの間にか昴さんの瞳が赤く染まっていた。凶器のように鋭い八重歯が霧島くんを狙っている。

鳥肌が立つぐらいの空間感。ここが学校だということを忘れそうなほどに。


「透明人間よりは吸血鬼のほうがまだ利便性があるな。だけどゴミに変わりはない。焦らなくてもあとでゆっくり相手をしてやるよ」

霧島くんはそう言うと、外にいるカラスたちに無言の視線を送った。

監視するように群がっていたカラスは一斉に校舎から離れていく。


「今はその無防備な透明人間をなんとかしたほうがいい。出来が悪くても可愛い弟なんだろ?」

フッと鼻で笑いながら、霧島くんは私たちの横を通りすぎた。 


「佐崎茉莉。あとで迎えにいく」

私にそう告げたあと、霧島くんは廊下を歩き去っていった。