沸々と私の中でなにかが弾けている。

どんな理由があっても、どんな過去があっても、それをこんな形で口にしてほしくない。

こんな人を見下すような言い方をするヤツだけには、聖のことを語られたくない。

私はいつの間にか、聖よりも前に出ていた。そしてそのまま霧島くんを睨み付ける。


「そんなことを影でコソコソと探って気持ち悪い。人が嫌がることばっかりして、なにが楽しいの?」

こんな感情は初めてかもしれない。

本当に本当に許せない。


「楽しいよ。自分以外は下等な生き物だからな」

「だったらアンタのほうがよっぽど下等なんじゃない?」

「なんだと?」

こんな睨みで怯んだりしない。

「どんな目的で私たちに突っかかってくるのか知らないけど、楽しみたいだけなら他を当たって。二度と私たちに近づかないで」

そう強い口調で言ったあと、私は聖の手を掴んで、「行こう」と廊下を歩き去った。