「指示?」
聖の眉がピクリと反応した。
一瞬で変わった空気。すると私の顔色を見た昴さんが見透かしたように言った。
「茉莉ちゃんは心当たりがありそうだね」
隠していたわけじゃない。単なる勘違いや思い過ごしならいいなって思っていただけ。
でもやっぱり〝あの人〟は危険な気がする。大きなことが起こる前に伝えたほうがいいと思った。
「……生徒会長の霧島禄」
ぽつりと打ち明けた。昴さんは私の言葉に付け加えるように、また話しはじめた。
「たぶん、彼は八咫烏の末裔だよ」
やた……がらすの……まつえい?
やっぱりただの人間じゃなかったんだって衝撃と、八咫烏という聞き慣れない言葉。
私と同じで、聖と晶くんの顔も険しくなる。
「八咫烏とは昔、神に遣えていたカラスのことだよ。神聖な生き物だし、正しき道へ導いてくれると信じられていて信仰している人たちもたくさんいたらしい」
「……そ、そういうのって架空のことだと思ってました」
説明されても、まだ実感がない。
「はは。でも吸血鬼や透明人間、狼男もみんなからはそう思われているだろうね。でも実際にはこうして存在してる」
「………」
「俺たちはどちらかと言えば西洋のほうだけど。日本には妖怪や神の遣いが他にもたくさんいるし、きっとまだまだ世の中にはいるだろうね」
だとしても、霧島禄はなにか根深いものを持っていそう気がする。



