聖がいなくなって、図書室はまた静かな空間に戻った。

レポートを進ませながら、窓の外は夜と夕方を混ぜたようなそんな色になっていた。

電線にはたくさんのカラスが止まっていて、みんながこっちを見ている気がする。

怪しげな雰囲気。

そう、これは一条三兄弟の力を知ることになる前日に感じたあの〝逢魔が時〟に似ている。

なぜか綺麗に横並びになっていたカラスが一斉に飛び立った。黒い羽が空中をひらひらと舞っている。

……と、その時。窓に反射して映る自分の背後に、人が立っていた。


「俺に気づかないなんて、あいつの鼻も大したことないな」

ゾワッとしながら振り向くと、そこには霧島禄がいた。


足音も気配もなにもなかった。薄気味悪くて、鳥肌がとまらない。

それにさっきの言葉って……聖のこと?

この前も昴さんの吸血鬼を匂わせるようなことを言っていたし、もしかして霧島くんは……。


「知ってるの?」

あえて主旨を言わずに聞いた。