気持ちだけを置いてきぼりにされてしまった私は、レポートがはかどるわけもなくて……。

「これ職員室に出しに行くけど」  

聖が終わっても、私はまだ半分しか進んでいなかった。


「私はまだ終わらないから先に行っていいよ」

……はあ。私のほうが早く図書室に来たのに、なにをしてるんだか。

っていうか、さっきのはなんだったんだろう。

本当に髪の毛にゴミがついてただけ?

私はこんなにも悶々としてるのに、聖だけなんにもなかったみたいに涼しい顔してズルい。


「じゃあ、出し終わってもお前のこと待ってるから、一緒に帰ろうよ」

「へ?」

「もうすぐ暗くなりそうだし、隣だから同じ家に帰るようなもんだろ」

不器用な言葉には、ちゃんと優しさも見え隠れしている。

私は単純じゃない。こんなことで舞い上がったりしないと頭では思っていても……。


「す、すぐ終わらせるから!」

聖の一言で、レポートをやるスピードが速くなった。前言撤回。私ってビックリするぐらい単純らしい。

聖はフッと口元を上げて、そのまま職員室にレポートを提出しにいった。

自分でも、聖の言葉に一喜一憂しすぎだと思う。でも心は正直というか、どうにもならないから厄介だ。