目を覚ましたばかりのレオンティーナの前に、赤とピンク、二着のドレスが差し出される。

「ソニア――今日は、外出の予定はないの。赤い方のドレスは外出着よ」
「え? そうなんですか? 絶対、お嬢様にお似合いになると思ったんですけど……」
「似合うにきまってるでしょ。似合うものしか仕立てないもの。そうね、もう一着は家用だから、そちらのピンクにするわ。赤い方は衣装室に片付けておいて」
「かしこまりました!」

 ソニアはよくやってくれてはいるが、なんというかそそっかしい一面がある。
 レオンティーナに対する忠誠心は、かなり強いようではあり、それはレオンティーナが期待した通りであるのだが。
 衣装室に赤いドレスを片付けたソニアが戻ってくるのを待って着替えを始める。

「家用と外出用のドレスの区別もつかないの?」
「どれも、私の目には素敵に見えるんです……!」
「そうね、それじゃしかたないわね……」

 レオンティーナは額に手を当てた。今まで見たこともなかったのだから仕方ないのだろうが、ソニアにはドレスの区別はつかないようだ。