優しい手つきでソニアは髪をとかす。横目でそれを眺めながら、レオンティーナは嘆息した。

「いやね、髪がぱさぱさ。椿の香油は持ってきてくれなかったの?」
「そんなもの、手に入りませんよ。庶民には――さあ、できましたよ。これでいかがですか?」

 小さな鏡が手渡され、そこに顔を映してみる。
 ソニアが結ってくれたのは、首の後ろで一つに束ね、団子を作っただけの簡素な髪形だった。髪飾りもないし、編み込みも作られていないが、ばさばさのままよりはだいぶましだ。

「――手を出して」

 首をかしげながら、ソニアは言われたとおりに手を差し出す。
 レオンティーナは、左手の薬指にはめられていた結婚指輪をそこに落とした。

「あなたにあげるわ。金とダイヤモンドよ。これを売れば、マレイモよりましな食事ができるでしょ」

 ソニアに指輪を渡したのは、施し程度の気分だった。
 できる範囲でソニアはレオンティーナの生活を居心地よくするよう手を尽くしてくれた。それならば、それにこたえるのが富める者の役目。
 ――これから、処刑されようとしていても、だ。

「レオンティーナ様! 受け取れません!」