「ティーナの願いは、できるだけ叶えることにしよう」
「そうしてちょうだい、お父様」

 ここでようやく、母が合流した。レオンティーナが見送りに出ていることに、母は驚いたように目を瞬かせた。

「あら、あなたもお見送りに来たの?」
「ええ、お母様。だって、昨日の夜ふたりともいなくなってしまうんだもの。お父様と出発前にゆっくりお話をしたいと思って」

 ふたりそろって、誕生日の食卓から姿を消したことをちくりと言ってやる。
 このくらいはかまわないだろう。

「……あら、お父様とお母様は大切なお話があったのよ」

 何が気に入らないのか、母はぷいと顔を背ける。

(……味方するのはやめるわよ、お母様!)

 そう口からこぼれかけたけれど、あわやというところで呑み込むことに成功した。
 母にも、少しは変わってもらわなければ困る。

「――さっさと出立なさったら?」
「名残おしいけれど、もう行くよ。では、ふたりとも元気で」

 ツンツンしている母に、父は気弱な笑みを向けた。

(そこで、もう一押し! もう一押しでしょうに!)

 心の中の声援など、父の耳に届くはずもない。