悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~

「宝石、ドレス――お母様に一番似合う品はわかるでしょ? それから、はやりの恋愛小説もいいと思う。ここには新刊はなかなか届かないから」

 ロアの流行りがすぐバルダート領まで届くならばいいのだが、かなりの時間差が発生する。そのため、日頃領地で過ごしている母は、ロアについてから慌ててドレスを用意していたこともあった。
 前世では、それもまた父の気配りのなさだとわめいていたから、そのくらいの知恵は貸してもいい。

「ティーナには、おいしいお菓子をお願いします。お勉強を頑張るから、同じ年ごろの男の子が使う教科書もお願いします」

 ちゃっかりと、ついでに自分の願いも口にしておく。
 ロアには、おいしいお菓子を売っている店がたくさんあるのだ。
生クリームを使った菓子は日持ちしないから無理だが、クッキー等の焼き菓子ならば、バルダート領まで運ぶこともできるだろう。

「……わかった」

 父はレオンティーナの方に身をかがめた。何をするのかと思ったら、宙に浮いたままだった両手が肩に置かれ、頬に口づけられる。
 前世では、父にそんなことをされたことはなかったから、思わず喉の奥から妙な声が漏れた。