悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~

 抱き着かれたまま、どうしたらいいのかわからない様子だ。レオンティーナの肩に置こうとした手が宙に浮いている。

「今度は、いつ帰ってきてくださる?」
「そ、そ、そうだなぁ……」

 手を宙に浮かせたまま、父は困った様子を見せた。

「無理? 帰ってこられない?」
「これでも、なかなか忙しいんだよ……」
「……それなら」

 これでも父はバルダート大公家の当主である。皇帝の補佐として、皇都ロアで日々仕事に追われているのは知っていた。だから、簡単に領地には戻ってこらえないであろうこともわかっている。
 ここまで戻ってくるようしつこく口にしたのは、子供ならばそうするだろうというレオンティーナの計算があってのことだ。

「それなら、お父様、お手紙書いてくださる? 毎日よ?」

(……このまま、二人の仲が修復されなかったら)

 そう遠くないうちに父は愛人を作ってしまう。愛人を作った父は幸せだったかもしれないけれど、残された母とレオンティーナには不幸だった。
 あんな想いはしたくない。

「お母様もお手紙がほしいと思うの。愛の言葉も忘れちゃいやよ。たまには贈り物もいいと思うわ」
「……贈り物」