悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く～破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます～

「――だけどな。父も忙しいのだよ、それはエレインもわかってくれ――」
「……ダメです」
「は？」

　父が驚いたような顔になったので、レオンティーナは父の服を掴んだ。
　母のような女性は、側にいてちやほやしなければならないのだ。かつての自分がそうであったから、レオンティーナには母の気持ちがよくわかる。
　昨夜のあれで、母の機嫌を取ることができて、今後はうまくやっていけると思っていたのだとしたら、甘い、甘すぎる。
　父と母の間に徹底的に足りていなかったのはコミュニケーションだ。それを痛いほどに痛感している。

「ダメ。もっといっぱい帰ってきて。ティーナも寂しいです。お父様が、いないと……」

　あの頃は気づかなかったけれど、今はわかる。父が母に甘いことも、現時点では娘をそれなりに大切に思っているらしいことも。
　――ならば。

「だから、お母様もきっと寂しいと思うの。お父様、ロアに行ったら、全然帰ってきてくださらないんだもの」

　甘えた仕草で父の身体に腕を回す。そうしながら、父の様子をうかがった。