レオンティーナが物心ついた頃には、両親の仲は悪く、父はめったに領地に戻ってくることもなかった。
(この空気も、どうにかさせてもらわないとだわ)
このままではいずれ、父は愛人を作ることになる。
めったに帰ってこない父。意地でも父に会いに行こうとはしなかった母。
この屋敷は、人が住んでいるのに寒々としていた。だが、今ならまだ間に合うかもしれない。いや、間に合わせるべきだ。
「――好きになさいませ! 私も好きにしますから!」
「エレイン!」
食事の途中だというのに、母は席を立ってしまう。
(あーあ、お父様、何をやっているのよ……)
父の情けない姿に、レオンティーナは嘆息した。
父が熱烈に恋をして母を求めたと言うが、たぶん母も父を嫌いだったということはないはずだ。そう言いきることができるのはやはり前世の記憶を思い出したからだった。
異母弟のハイラムが生まれたという知らせがこの屋敷に届いた頃――母は、ひとり部屋で泣いていた。
それは、今のようなヒステリックに当たり散らすような泣き方ではなく、ただ、静かに肩を震わせて泣いていた。
(この空気も、どうにかさせてもらわないとだわ)
このままではいずれ、父は愛人を作ることになる。
めったに帰ってこない父。意地でも父に会いに行こうとはしなかった母。
この屋敷は、人が住んでいるのに寒々としていた。だが、今ならまだ間に合うかもしれない。いや、間に合わせるべきだ。
「――好きになさいませ! 私も好きにしますから!」
「エレイン!」
食事の途中だというのに、母は席を立ってしまう。
(あーあ、お父様、何をやっているのよ……)
父の情けない姿に、レオンティーナは嘆息した。
父が熱烈に恋をして母を求めたと言うが、たぶん母も父を嫌いだったということはないはずだ。そう言いきることができるのはやはり前世の記憶を思い出したからだった。
異母弟のハイラムが生まれたという知らせがこの屋敷に届いた頃――母は、ひとり部屋で泣いていた。
それは、今のようなヒステリックに当たり散らすような泣き方ではなく、ただ、静かに肩を震わせて泣いていた。



