皇帝が皇妃に向かって拳を振り上げかけたのを、掴んでとめたのはヴィルヘルムだった。

「父上。いけません」
「……ヴィルヘルム……わかった。あとは、法に任せることにしよう」

 力なく皇帝の手が落ちるのを、レオンティーナは茫然と見ていることしかできなかった。