彫像の陰に押し込まれ、顔を出さないようにと命じられる。何が起こっているのかまったく理解できず、レオンティーナはこそりと顔を出してしまった。

「近くに仲間がいるぞ、探せ!」

 ふり返ったヴィルヘルムがそう叫んだのは、近くに仲間がいるということなのだろう。

「計画は失敗だ、逃げろ!」

 襲撃してきた者達は、一斉に引こうとするがヴィルヘルムはそれを許さなかった。
 レオンティーナを案内してきた使用人が、ヴィルヘルムの剣に切り裂かれて床に倒れこむ。

(な、なんで私が襲われるのよ……!)

 皇妃が邪魔だと思っていたのは、ヴィルヘルムではなかったのか。
 月の明かりに細い銀の刃が煌めく。ヴィルヘルムは、それをなんなくかわした。
 ヴィルヘルムの剣によって、またひとり地面に倒れこむ。
 何人かは取り逃がしたようであるけれど、ヴィルヘルムの前に姿を見せた騎士達は、襲撃犯をとらえていた。

「――大丈夫か、レオンティーナ!」
「わ、私は何もありませんけど……! ヴィルヘルム様は?」
「俺? なんともない」

 ヴィルヘルムは、笑ってレオンティーナを引き寄せる。